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EUの化学物質に関する法律には「RoHS指令」と「REACH規則」があります。2003年2月、RoHS()指令は電気・電子機器類に「特定有害物質」の含有を制限して環境破壊や健康被害を最小限にする目的で発効しました。2011年7月21日、新たにRoHS()指令の発効に伴い、RoHS()指令は2013年3月1日に失効になりました。
RoHS()指令の大きな特徴は、附属書兇痢特定有害物質」の見直し・修正を定期的に実施するように定めた点です。これを受けて新たに4物質が追加になりましたが、今後「特定有害物質」は、「REACH規則」の「認可対象物質」と「制限物質」の登録状況を確認しながら増加していくのではと思います。ちなみに、2017年6月時点で特別な許可が必要な「認可対象物質」は43物質あり、認可対象の候補物質である「高懸念物質」(SVHCと略記)」は181物質に上っております。
今回はRoHS()指令を中心に纏め、次回はREACH規則について報告する予定です。
表-1 「RoHS指令」と「REACH規則」の関係
RoHS指令 | REACH規則 | |
目的 | 「特定有害物資」を制限して環境破壊や健康被害を最小限にする。 | 化学物質の登録、評価、認可及び制限で人の健康と環境の保護、EU化学産業の競争力の維持向上。 |
要求事項 | 「特定有害物質」の最大許容濃度が設定され、この基準値を遵守。 | 「SVHC」が0.1wt%以上含まれ、年間1トンを超える場合は届出。 供給先へ情報開示義務 消費者へ情報開示義務(45日以内) |
対象製品 | 電気・電子機器 | 全ての製品 |
管理物質 | 6物質 (2019年7月からは10物質に) | 認可対象物質:43物質 SVHC:181物質 |
管理レベル | 含有の有無 | 総含有量 |
リスク | 自社分析可能 | 自社分析困難 |
業 務 | 部材のRoHS対応を調査 | ・部材のSVHC含有量調査 ・EUへ1年間に出荷する製品に含まれる SVHC量調査 |
・指令はこの指令を受けてEU各国で法律を制定。規則は加盟国にそのまま適用。
AC1,000V又はDC1,500Vを超えない電圧を有する電流/電磁場が必要な電気・電子機器で、対象製品は11のカテゴリに分類されております。
軍用、宇宙用、本指令対象外製品専用の機器、据付型大型産業用工具、大規模固定式設備、 能動型埋め込み医療機器、光起電性パネルなどが対象外です。
2015年6月1日に4種類のフタル酸エステルが追加・公布されました。
表-2 特定有害物質と適用開始日
特 定 有害物質 |
最 大 許容濃度 (重量%) |
適 用 開 始 日 | ||
カテゴリ8 (医療機器) カテゴリ9 (監視・制御機器) |
カテゴリ 1〜7及び10 |
カテゴリ11 (その他の電気・電子機器) |
||
鉛 | 0.1 | 2014年7月22日 ・体外診断医療機器 (2016年7月22日) ・産業用監視・制御機 器(2017年7月22日) |
2006年7月1日 | 2019年7月22日 |
水銀 | 0.1 | |||
カドミウム | 0.01 | |||
六価クロム | 0.1 | |||
PBB | 0.1 | |||
PBDE | 0.1 | |||
DEHP | 0.1 | 2021年7月22日 | 2019年7月22日 | |
BBP | 0.1 | |||
DBP | 0.1 | |||
DIBP | 0.1 |
カテゴリ | 対象製品 | カテゴリ | 対象製品 |
1 | 大型家庭用電気製品 | 7 | 玩具、レジャー及びスポーツ機器 |
2 | 小型家庭用電気製品 | 8 | 医療機器 |
3 | IT及び遠隔通信機器 | 9 | 監視・制御機器 |
4 | 民生用機器 | 10 | 自動販売機類 |
5 | 照明装置 | 11 | その他の電気・電子機器 |
6 | 電動工具 | − | − |
フタル酸と色々なアルコールから製造されるフタル酸エステル類は使用用途に応じて多くの化合物が工業的に製造されております。
フタル酸エステル類の大きな特徴はそれ単体では硬くて取扱いが難しいプラスチックに柔軟性を付与する性質です。特に塩化ビニル樹脂やゴムの可塑剤として長年に渡り利便性向上のため便利に使用されております。
しかしながら、内分泌かく乱性、生殖毒性、発がん性など関して、人への悪影響が懸念される物質であることが分かりました。子供向けのおもちゃ製品については一部の物質が規制されております。
EU域内に対象の電気・電子機器製品を輸出している製造者は、「適合宣言書」と「CEマークの貼付」の義務付けは変わりません。今回から10物質の「特定有害物質」の含有の有無を調査して適合性を確認し、新たにRoHS指令適合の手続き行う必要があります。手続きを行わずに表-2の適用開始日以降もCEマークを貼付して製品を上市した場合、不適合と判断されますので注意が必要です。
今回はRoHS(供忙慘での「特定有害物質」について取り上げてみました。
電気・電子機器を対象とする「特定有害物質」と全ての製品が対象のREACH規則の「認可対象物質」と「制限物質」とは非常に複雑で分かりにくい関係です。「認可対象物質」にしても、その候補物質であるSVHCは181物質が登録され、更にSVHC予備軍となる物質は約1,500物質と言われております。このことからも、将来的に「特定有害物質」は増加していくのではと思います。将来、RoHS(供忙慘の「特定有害物質」が増えると、材料中の濃度分析など製造者一社で対応するのが難しくなるものと懸念します。
「特定有害物質」が増えた場合、該当する「特定有害物質」によって機能を維持していた電気・電子機器製品及びその部材は、その機能を維持するため代替物質の探索など製品設計からやり直すことにもつながりますので、RoHS(供忙慘の「特定有害物質」の追加動向には注意が必要です。
(参考資料) |