ISO/TS16949 自動車産業における品質マネジメントシステム

  • HACCP
  • 食品への安全・安心

  •  2000年夏の、乳業メーカーによる食中毒事件や、翌年の9月に発覚した国内初のBSE罹患牛の問題は、それまでにない食品への安全・安心を求める消費者の要望が高まりました。2003年7月に「食品安全基本法」が制定され、本法律の中で「食品の安全を守る第一義的責任は企業にある」と明言されました。これに基づき「食品安全委員会」が発足し、今日に至っています。
     消費者の要望の一番大きなものが、安全・安心です。それに応えることが信頼につながります。消費者はHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:危害分析重要管理点)手法システムで製造されたからその商品を購入するわけではありませんが、美味しさや安さ、デザイン以前の問題として、安全に作られているということが大前提となっているのです。それだけにHACCP手法の導入は、食品製造業に携わるものにとって大前提として考えることが求められています。

  • 求められるトレーサビリティ

  • トレーサビリティが最近注目されていますが、製造段階のトレーサビリティは消費者のためというより、製造者自身のリスク管理の一環ともいえるのです。わが国は食料自給率41%という、先進国でも超低自給率の国です。この数字からは、安価な食材を求めて海外に仕入れを依存している実態を垣間見ることができます。現在、この輸入食材・原料などの品質が問題となっています。このため海外の食品工場としては、品質向上と、より高度の衛生的な製造過程としてHACCP手法を導入して改善が進んでいます。
     日本国内と比較しての原材料費、労働力での優位さに加え、衛生的にも国内の食品工場に迫ってくるとなると、日本は生産地のみならず、食品工場まで淘汰される恐れが出てきます。これにうち勝ち、日本の食品工場が生き延びていくためには、OEM(Equipment Manufacturing:相手先商標商品製造)の発注主や流通業、そして消費者に、国内製造での食品がいかに「安全」で「美味しく」「健康に良い」のかをアピールすることが必要です。このための手段としてHACCP手法の導入は避けて通れません。

  • HACCP動向

  • HACCPは、1960年代に米国の宇宙開発計画(アポロ計画)の一環として、宇宙食の微生物学的安全確保のために開発された新しい食品衛生管理システムです。100%の安全性を保証する完璧な宇宙食を製造するにはどうするか。最終製品の検査に頼っている従来のようなやり方では、膨大な数の検体が必要ですし、時間もかかります。そこで考え出されたのが、工程ごとに管理し、しかも記録を重視するきわめて合理的な衛生管理手法です。このようにして、HACCPのもとになる概念ができあがってきました。1990年代に入ると、HACCPによる衛生管理は本国の米国はもとより、カナダ、EU、オーストラリア、ニュージーランドなどの食肉や食肉製造、乳・乳製品、水産食品を中心に導入され、東南アジア諸国その他の国々でも輸出品を中心に普及し、今日では食品全体の衛生管理の国際標準としての地位を築いています。
    わが国でも、1975年にはHACCP理論が紹介され、1990年代前半にはその考え方を織り込んだ施策が次々と打ち出され、真剣に検討されるようになりました。そして、1994年、当時の厚生大臣の諮問機関「食と健康を考える懇談会」の報告書のなかで、HACCPの導入が勧告されました。この勧告を受けて、1995年に食品衛生法が改正され、「総合衛生管理製造過程」という新たな概念で、HACCPが製造加工基準のある食品を対象にした承認制度としてスタートし、社会的な認知が図られるようになったのです。

  • 衛生的に優れた品質の食品を生産するための3つの条件

  •  HACCPは食品の取扱いのみで、あらゆるリスクを回避することは不可能です。衛生的に優れた品質の食品を生産するためには、次の三つの条件が必要です。このうちのとくに大切な取扱いはHACCPで行うということができます。
     ? 安全で衛生的で品質の良好な原材料を使用する(原材料)。
     ? 食品取扱者を含めて清潔で衛生的な作業環境を確保する(一般的衛生管理プログラム)。
     ? 食品の取扱いにより危害発生を防止する(HACCPで行う)。

  • 衛生管理の必要性

  • 食品に由来する危害防止には、原材料を生産する農場から消費者の食卓に至るまで(飼育農場→と畜場→製品工場→流通・消費の各段階で)一貫した衛生管理が必要です。一般的衛生管理プログラムでは、農場段階ではGAP(適正農業規範)、製造加工段階ではGMP(適正製造規範)、それ以外ではGHP(適正衛生規範)と表現は違っていますが、同じ概念です。1997年には、FAO(国連食糧農業機関)/WHO(世界保健機関)の合同食品規格委員会は、食品衛生管理の基本原則として「食品衛生の一般的原則」をまとめました。このほとんどは一般的衛生管理プログラムに相当し、農場から食卓に至る一連の流れに対して適用するとともに、一連の流れの各段階でカギとなるべき衛生管理事項にHACCPの適用が必須であると勧告しています。下記に「図 農場から食卓までの安全管理を示します。
    農場から食卓までの安全管理
                           図 農場から食卓までの安全管理