ニュースレター
知っておきたい最新情報を毎月お届けいたします。
「都市鉱山」。聞き慣れない言葉ですが、1980年代、東北大学の南条教授が提唱した概念です。
今回は都市鉱山の現状と今後の動向をまとめてみました。
都市鉱山とは?
都市においてゴミとして大量に廃棄されている家電製品の中には、貴金属やレアメタルなどの有用な資源が含まれています。
これらの有用な資源を鉱山に見立て都市鉱山と呼ばれます。
日本の都市鉱山の現状
2008年1月、独立行政法人・材料研究機構によると日本の都市鉱山は世界有数の資源国に匹敵するという報告があります。
例えば、金は6,800トンで世界の埋蔵量42,000トンの約16%、銀は60,000トンで約22%、インジウムで約60%など世界の埋蔵量の10%を超える多数のレアメタルやレアアースが都市鉱山に埋蔵されているといわれます。
下図は日本の都市鉱山の埋蔵量が世界の年間消費量の何年分を賄えるかをまとめたものです。
レアメタルの中で金、白金、ロジウム、パラジウムなどの貴金属は高価なため、電気・電子製品や自動車からほとんど回収・リサイクル使用されています。
しかしながら、液晶に使われるインジウムの様な希少性の高いレアメタルでも、鉱山からの採掘の方が安価なため、廃棄されているのが現状です。
今後のレアメタルなどの動向について
自動車が環境問題のために高性能化・エコカー化し、レアメタルの塊といわれる携帯電話に代表される電気・電子機器も小型化・高性能化・多機能化に応えるためレアメタルやレアアースの需要は益々増加することが予想されます。
日本はレアメタルやレアアースを海外の地下資源に頼ってきましたが、以下の問題をはらんでいます。
1)資源価格は、変動はあるが右肩上がりの高騰が続いている。
2)産出国が特定の地域に偏在しており、資源ナショナリズムの台頭など世界情勢に左右されやすい。
3)世界経済のグローバル化で、産出国自身が消費国に変わりつつある。
資源価格の高騰、資源ナショナリズムの台頭、資源産出国の変貌などの国際情勢の変化により、都市鉱山から再利用される有用資源も採算性が向上してきました。
都市鉱山からの産出
日本の都市鉱山から有用な資源を産出しているパイオニア企業として、横浜金属(株)とDOWAホールディングス(株)が有名です。
横浜金属(株)は、環境問題がそれ程でもない時代にパソコンからの貴金属回収や日本で最初に携帯電話に使用される金の回収事業を立ち上げた企業です。
また、DOWAホールディングス(株)は、旧同和鉱業という老舗の製錬企業でしたが、製錬というコアビジネスに産業廃棄物のリサイクルという環境ビジネスを組み合わせ、都市鉱山に係る売り上げは1000億円、経常利益100億円を計上してます。
今後の都市鉱山
前述の両社が都市鉱山ビジネスを開始したきっかけは、多摩川に廃棄されていた現像液から銀の回収、機械メーカーからの廃油処理という産業廃棄物処理に携わったことでした。
解体、分別、製錬などの高純度化といった技術開発やノウハウの確立は重要ですが、1990年代以降、国が本腰を入れ始めた「家電リサイクル法」、「容器包装リサイクル法」、「自動車リサイクル法」などの環境法令が都市鉱山ビジネス拡大の推進力になったと言われています。
来年の通常国会で「小型電子電気機器リサイクル法」が制定される予定です。
本法案では、電子レンジ、デジタルカメラ、パソコン、ipad、携帯電話、携帯音楽プレーヤーやカーナビなど、1Kgあたり有価物が71円以上になる45品目が対象となります。
これからは日常生活で使用される多くの電気・電子機器からレアメタルやレアアースなどの有用物が回収され、再使用されることになり、地球環境保護や私達の利便性向上に寄与することになります。
経済原理で太刀打ちできず廃棄されていた都市鉱山も「宝の山」になるビジネスチャンスの機運が拡大しています。
有用な資源をリサイクルしてライフサイクルを長期化することが動脈産業ばかりでなく、静脈産業にとっても重要になります。
(参考) 小型電気電子機器リサイクル制度及び使用済製品中の有用金属の再生利用(環境省) http://www.env.go.jp/council/03haiki/y0324-04b.html |