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再生可能エネルギー(自然エネルギー)の利用拡大を図る目的として、
「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(以下、本法と略記)が2011年8月26日に成立しました。
施行は2012年7月1日です。
これに伴い、2002年(平成14年)に制定された「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)」は、既存の発電設備に影響が出ないように必要な経過措置を講じた後廃止されます。
本法の概要
・本法は、発電事業者が自然エネルギーで発電した電気を、国が定めた「固定価格」で、
一定の期間、電気事業者(電力会社)が買取ることを義務付けたものです。
・買取りの費用は、全国民(個人、電気利用事業者)が電気使用量に応じて負担します。
2.1 国による買取り価格の決定
自然エネルギー発電による電気は従来の電気に比べ割高となります。
自然エネルギーの電気の利用促進には、採算の取れる程度の価格を設定し、一定期間、電力会社が買取る枠組みを国が決定します。
2.2 買取り対象自然エネルギー
太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス(動植物由来の有機物)
住宅用太陽光発電を除く自然エネルギー利用の発電設備は経済産業大臣の認定が必要であり、電力会社は認定された発電設備のみから買取ることができます。
認定の条件は、「安定的かつ効率的に自然エネルギー源を用いて発電を行う設備であること等」という観点から評価されます。
電力会社は「電気の円滑な供給の確保に支障が生ずる恐れがあるとき」には接続を拒否できる、という例外条項も規定されています。
買取り価格・期間は自然エネルギーの種類や規模などに応じて関係大臣が協議したうえで、中立的な「調達価格等算定委員会」での議論に基づいて経済産業大臣が決定します。
買取り価格・期間は半年毎に見直されますが、施行後3年間は発電事業者の利益に配慮した価格設定としています。
電力消費量の多い事業者の場合、買取り負担額(付加金)が増えることで価格競争力を失う危険性があります。
そのため、単位売上高当たりに電力会社から購入する電力量が一定の割合を超え、かつ一定量以上の電力を購入している場合、付加金の80%以上が免除されるとしています。
震災で著しい被害を受けた需要家に対しては、一定の要件を満たせば、2012年7月1日から2013年3月31日の9か月間、付加金は請求されません。
現在の住宅向け太陽光発電の付加金は各電力会社で1銭から7銭/kWhの差があります。
自然エネルギーによる電気使用の多い地域ほど付加金が多くなる不公平が生じるため、費用負担調整機関を設置して費用のばらつきを調整します。
本法の課題
本法は自然エネルギー発電による電気の利用・拡大を目的に制定されましたが、施行に向けて明確にすべき内容があります。
以下の課題が考えられます。
1)本法の関連省庁は経済産業省、環境省、農林水産省、国土交通省、消費者庁であり、買取り価格・期間ではそれぞれの省庁の立場による綱引きが生じる恐れがある。
2)火力など従来の発電コストに比べ割高になるので、今後決定される買取り価格・期間の具体的内容にかかっている。
3)電力会社が接続拒否できる例外条項において、「支障が生じるおそれ」の具体的内容が明確でないため、電力会社の裁量で拒否される可能性がある。
4)電気利用事業者の減免措置において、「一定の割合」は未定であるが、減免措置を受けれない個人や事業者とのバランスをどうするのかも今後の課題である。
(参考) ・電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(経済産業省) http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/2011kaitori.pdf ・資源エネルギー庁関連サイト http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/whole.html |