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地球温暖化防止には炭酸ガス(CO2)などの温室効果ガス(GHG)削減のため、再生可能エネルギー(以下、自然エネルギーという)の活用が不可欠ですが、わが国は先進各国に比べ自然エネルギーの導入が遅れています。
自然エネルギーはコスト競争力が劣り、政策面の支援が必要で、政策の強弱が普及率に影響しています。
先進各国が2000年代半ばから普及を促進する政策を強化する中、逆に日本は後退したことが遅れの要因といわれています。
今回は、2010年6月、民主党政権が閣議決定した「新成長戦略」でのグリーン・イノベーション政策を中心にまとめました。
炭酸ガスの発生状況
2008年の全世界のCO2排出量は293.8億トンであり、中国(65.5億トン)と米国(56億トン)で世界の41%を占めています。排出量第5位の日本は11.5億トンで世界全体の4%弱です。
先進各国が排出量を削減する中、中国は1990年以降43.1億トン増加していて、2008年は1年間で5億トンの増加となっています。
二大排出国である米、中国が削減義務を負わない京都議定書は温暖化対策としては公平性に欠けていると言わざるをえません。
日本は2020年に1990年比で25%削減する中期目標を明記しましたが、数量で表すと1990年の排出量12億トンが25%削減で約9億トンとなります。
2008年の実績に比べ約2億トンの削減となりますが、全世界のCO2排出量でみると0.7%程度の削減にすぎません。
GHG削減に関する日本の姿
平成21(2009)年8月の自公政権時代、2050年までにGHGガス80%削減のため、以下を骨子とするビジョンを発表しています。
民主党政権の「新成長戦略」でも低炭素化社会の実現の流れは変わっていません。
「グリーン・イノベーション」、「ライフ・イノベーション」、「アジア経済」、「観光・地域」を成長分野とし、これを支える基盤として「科学・技術・情報通信」、「雇用・人材」、「金融」の7つの戦略分野を決定しています。
しかも多くの分野で低炭素化社会の実現が前提であり、「雇用・人材」確保や「金融」特に環境金融に波及効果をもたらすビジョンとなっています。
中期目標である2020年における「グリーン・イノベーション」により需要は50兆円、雇用の創出は140万人といわれ、その内自然エネルギー関連で需要は10兆円と試算されています。
低炭素化社会実現のための政策
1)CO2排出削減の柱であった原子力発電に関しては、2011年3月に発生した東日本大震災による東京電力福島原子力発電所の大事故で、原子力発電政策の見直しをせまられております。化石燃料から天然ガスへの切り替えを図りつつ、自然エネルギー利用政策を加速させると考えられます。
2)日本の優れた環境技術を海外(特にアジア)のGHG削減プロジェクトへの参加や、政府のトップセールスによる民間ビジネスの後押しを行います。(官民一体化・連携政策)
3)補助金、エコポイント制度など、エネルギー・GHG削減に関しては数多くの支援政策が実施されていますので、政府情報を注視しておく必要があります。
GHG検証制度
今後は地球温暖化防止に向け、日本全体でGHG排出量削減がますます加速されることが予想されます。
企業にとってもGHG削減によるビジネスチャンスや環境格付け融資などのメリットも発生する可能性があります。
GHG排出量の実績は、自企業でGHGの排出・削減量を確認し、その実績を公表しても通用しません。
GHG検証を行える認証機関による透明性・公平性のあるGHGの排出量・削減量の正確な検証が必要です。
認証機関のGHG検証で次のようなビジネスチャンスの拡大が期待されます。
1)国内排出量取引制度
・自主参加型国内排出量取引制度(JVETS)
・オフセット・クレジット制度(J-VER)
2)都道府県条例による排出量取引制度における中小企業クレジット制度
3)グリーン購入・グリーン契約 ⇒ 国や企業による率先的購入や契約の推進
・カーボン・オフセット制度
・カーボン・フットプリントなどの「見える化」
4)環境金融 ⇒ 環境格付け融資、エコファンドへの支援
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