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2015年12月、パリで開かれたCOP21で2020年以降の地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」が採択され、約1年後の2016年11月に発効となりました。
主な骨子は、
1)平均気温の上昇抑制
2)今世紀後半には温室効果ガス(以下、GHGと略記)排出量の「ゼロ」化
3)全参加国が削減目標を計画立案・実施
4)途上国への支援 等
です。
1997年のCOP3で採択された「京都議定書」は先進国のみの義務化でしたが、18年経過した「パリ協定」はほぼ全ての国がGHGの排出量削減に義務を負うことになりました。
パリ協定の概要を京都議定書と比較して表‐1に纏めてみました。
【表‐1 パリ協定と京都議定書】
パリ協定 | 京都議定書 | |
目的 | 出来るだけ早く世界のGHG排出量を頭打ちにし、今世紀後半には排出量を実質「ゼロ」にする ・脱炭素化社会・経済へ転換 |
大気中のGHG濃度を安定化させる |
期間 | 2020年以降 | 2008〜2012年 |
参加国 | 196カ国・地域 | 83カ国・地域 |
拘束力 | ・全参加国が目標を設定し、GHG削減の実施を義務化 ・目標値達成は義務化ではない |
先進国のみに目標値達成を義務化 |
目標(長期を含む) | 産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えることを目指し、1.5℃未満も努力する | 2008〜2012年の期間、先進国のGHG排出量を最低でも5%削減する(1990年比) ・日本は6%削減目標で、8.4%削減を達成 |
進め方 | 全参加国は5年ごとに見直して、国連に報告 ・5年後の目標は現段階の目標より上回ること ・2年に一度進捗状況を報告し、審査を受ける |
自国でのGHG削減に加え「京都メカニズム」手法を導入。この手法は「パリ協定」でも採用されている ・クリーン開発メカニズム(CDM) ・排出量取引 ・吸収源活動 |
2010年のCOP16(カンクン合意)で2012年以降の枠組みが示されましたが、各国の目標値を合計しても産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えることが達成できないことが判明し、「パリ協定」に繋がりました。
2015年末の時点で、パリ協定に合意した多くの国から自主的な目標が提出され、その中の主要各国やEUの削減目標を表‐2に示しました。米国は2025年の目標であり、中国やインドはGDP当たりの排出量を基準にして目標を定めております。
表‐2 主要各国の削減目標
国 名 | 2030年の削減目標 | 基準年 |
日本 | 26%削減 | 2013年 |
米国 | 26〜28%削減(注1) | 2005年 |
EU | 40%削減 | 1990年 |
ロシア | 25〜30%削減 | 1990年 |
カナダ | 30%削減 | 2005年 |
韓国 | 37%削減 | (注3) |
中国 | 60〜65%削減(注2) | 2005年 |
インド | 33〜35%削減(注2) | 2005年 |
(注1)米国は2025年目標
(注2)中国、インドはGDP当たりの数値
(注3)GHG削減策を講じなかった場合の2030年比
しかしながら、各批准国の削減目標値を合計しても、未だ気温上昇を2℃以内に抑えることは困難と言われております。
さらにトランプ大統領によるクリーン・パワー・プランの再評価に関する大統領令への署名により、温暖化対策の行方は混沌の様相を呈しています。
1) 図‐1に示したCO2排出量世界第1及び3位の中国とインドは経済成長が著しく、GDP増大によって見掛け上の削減につながるのか気がかりなところです。いずれにしても、この両国は2030年にはCO2排出量世界の1,2位となると予想されます。
《図-1 世界のCO2排出量》 |
【出典】 全国地球温暖化防止活動推進センターホームページ 『世界の二酸化炭素排出量(2013年)』 |
2) 海は年間に約80億トンものCO2を吸収し、大気中のCO2濃度上昇を抑えておりますが、サンゴの白化など海水温度上昇が報道されております。図‐2の気温と同じ傾向で海面水温上昇が続いて吸収能力が低下し、逆に大気へCO2放出量増加が懸念されます。
《図-2 北半球の年平均気温偏差》 |
【出典】 気象庁ホームページ『世界の年平均気温』より「北半球の年平均気温偏差」 |
3)京都議定書を離脱したGHG排出量世界第2位の米国がパリ協定からも離脱するのか、その動向が注目されます。また、自国の重要政策や国益優先のため、地球温暖化防止などの環境政策が後退する懸念があります。
2015年12月、「地球温暖化対策推進本部」において2030年度に26%削減、2050年度には80%削減、という目標が決定されました。
年度 | 2013 | 2030 | 2050 |
GHG排出量 | 14億トン | 10億トン | 3億トン |
これをうけ、2016年5月の閣議で地球温暖化対策計画が決定されました。内容は2030年度削減目標のための対策が中心です。2050年度の80%削減では脱炭素化社会・経済にならないと達成は困難だと思います。考えられる脱炭素化のイノベーション技術も含め、2030年度削減目標のための対策を次回のレポートで纏めてみたいと思います。
私達は、呼吸により酸素をCO2に変えて生命を維持しております。呼吸によるCO2排出量は一日当たり150グラムと言われております。世界の人口を75億人とすると、CO2排出量は年間4.1億トンとなります。図‐1で示した全世界の排出量は329億トンですからその割合は1.2%となり、地球温暖化の影響は極めて少ないと言えます。