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2016年1月、食品製造業・販売事業者から堆肥化などの廃棄処分を受託した愛知県の産業廃棄物処理業者が食品として不正転売し、スーパー等で販売されていた事件は未だ記憶に新しいことと思います。この産業廃棄物処理業者は廃棄物や食品に係る法令に違反しており、その他の産業廃棄物処理業者に対する信頼を裏切る事件となりました。
1)「廃棄物処理法」・・・産業廃棄物管理票(「マニフェスト」)の虚偽報告
2)「食品衛生法」 ・・・無許可営業
この他「食品リサイクル法」や「食品表示法」等の他法令にも抵触する事件でした。
この事件を受け、2016年3月に環境省が再発防止策を発表し、2017年3月に廃棄物処理法の改正が閣議決定され国会に提出されたので、その内容を纏めてみました。
事件の概要を下のフロー図に示します。
この事件を受けて、2016年3月に環境省が発表した再発防止策は以下の内容です。
1)マニフェストの機能強化のために「電子マニフェスト」とする。
2)食品の廃棄処理業者に対する監視強化。
3)食品排出事業者に対して廃棄物の不正転売防止対策を強化。
1)、2)は「廃棄物処理法」の改正が必要な再発防止策であり、3)については「食品リサイクル法」の改正が必要となります。いずれにしろ、この再発防止策は不正転売防止のために排出事業者に対する要求事項を強化した内容となっております。
2017年3月、閣議決定された廃棄物の不正転売に関する改正内容は次の通りです。
1.市町村長、都道府県知事等は、廃棄物処理業の許可を取り消された者等が廃棄物の処理を終了していない場合に、これらの者に対して必要な措置を講ずることを命ずることができることとする。また、当該事業者から排出事業者に対する通知を義務づけることとする。
2.特定の産業廃棄物を多量に排出する事業者に、紙マニフェストの交付に代えて、電子マニフェストの使用を義務付けることとする。また、マニフェストの虚偽記載等に関する罰則を強化する。
(1項)
廃棄物処理業者が許可を取消された場合、これまでは許可取消し時点で処理業務は中断させられましたが、改正では取消されても廃棄物処理を終了するまでは行政機関命令によって実施させる、となります。
(2項)
環境省では「不適正処理があった場合に行政機関による早期の実態把握・原因究明が可能な電子マニフェストの利用の強力な推進」を法改正の背景としております。
1)特定の産業廃棄物を多量に排出する事業者
排出事業者がどの範囲か明確ではありませんが、いずれ環境省令で規定されると思います。対象事業者かどうかを確実に確認しなければ、うっかり「廃棄物処理法違反」になりかねないので注意が必要です。
2)マニフェストの虚偽記載等に関する罰則の強化
マニフェストは伝票ですから、書式どおりに書かれているか、記載に抜けがないかをチェックするのが一般的です。伝票内容に虚偽があるかの判断は大変難しく、「電子マニフェスト」を採用すれば虚偽記載が見つけられるとも思いま
せん。いずれにしても、不正転売を防ぐ仕組みの強化や廃棄物処理業者への監視強化等、排出事業者に一段の負担がかかるのは間違いないと思います。
また虚偽記載等の罰則強化は「紙マニフェスト」を使用する事業者も対象となりますので注意が必要です。
昭和45(1970)年に制定された廃棄物処理法は問題発生の都度改正を重ね、平成になってからは年に数回も改正されている状況です。今回の食品廃棄物の不正転売事件も特定の排出事業者に対する「電子マニフェスト」の義務化や管理の強化につながりました。
廃棄物処理法に限ったことではありませんが、難解な法律用語や文章更にはグレーゾーン等で解釈や適用対象なのか判断に迷うことが多々あると思います。特に改正頻度が多い法令や大規模に改正された場合などは要注意です。行政指導や認可取消しを受けないためにも、判断に迷う場合には地元の行政機関等で確認されることをお薦めします。
(参考資料) |