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第22回 「バーゼル法と廃棄物処理法」

    環境ショートレポート

    1.はじめに

     2017年3月10日、「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(バーゼル法)」及びこれに関連して「廃棄物処理法」も一部改正が閣議決定され、国会に提出されました。「バーゼル法」は余り馴染のない法律ですが、廃棄処分やリサイクルを目的として国が定めた有害な廃棄物(「特定有害廃棄物」という)の輸出入を規定した法律です。
     1970年代、先進国から持ち込まれた廃棄物が開発途上国に放置されたことで深刻な健康被害や環境汚染が問題化しました。これを防止する国際法として「バーゼル条約」が1992年に発効され、日本も1993年に同条約に加入し、その履行のための国内実施法として「バーゼル法」制定と「廃棄物処理法」が改正施行されております。制定から約25年経過する中で、輸出については後述する「雑品スクラップ」の不正輸出問題、輸入では有用金属を含む廃電子基板についての煩雑な輸入手続き解消が要望されておりました。

     

    2.バーゼル法の概要


     「バーゼル法」の概要をフローで示します。当然ながら、不適正な処理があった場合には「経済産業大臣」から回収・適正処分を命ずる措置命令が規定されております。

    バーゼル法の概要

     今回閣議決定された「バーゼル法」の改正内容を要約すると以下になります。

    (1)「特定有害廃棄物」の範囲の見直し。
    (2)輸出先での環境汚染防止について、環境大臣の確認事項の明確化。
    (3)「特定有害廃棄物」の輸入に係る認定制度の創設・輸入手続緩和。
      ・輸入事業者及び再生利用事業者の認定制度の創設。

     

    3.バーゼル法での輸出入の推移


    経済産業省がまとめた輸出入量の推移を表‐1に示します。件数は申請して許可された数を示しています。

    表‐1 バーゼル法での輸出入量の推移

    2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
    輸 出 件数 852 1,018 1,098 964 1,007
    量(トン) 120,466 198,210 180,035 172,622 208,238
    輸 入 件数 181 386 516 902 1,154
    量(トン) 9,633 32,057 29,904 38,511 29,833


    輸出量は約20万トン、輸入量は約3万トンで推移し、その中身は以下の通りです。
    輸出/鉛スクラップ、石炭灰、銅合金灰が多く、石炭灰を除くと金属回収を目的にした有害廃棄物が圧倒的です。
    輸入/電子部品スクラップ、金属含有スラッジ、電池スクラップ(ニッケルカドミウム、 リチウムイオン等)が多く、こちらも金属回収を目的としています。

     

    4.バーゼル法と廃棄物処理法との関係


     「バーゼル法」で規定されている「特定有害廃棄物」の代表例には使用済み鉛蓄電池、有害金属含有の汚泥、医療廃棄物等があります。廃棄物と明記されていますが、この中には金属を回収して再生利用を目的とする「有価物」も含まれております。なお、国内で廃棄物とされる物の輸出入を行う場合には「廃棄物処理法」の適用を受けます。「廃棄物処理法」とは下図の関係にあり、二つの法律が重なるグレーゾーンにある廃棄物は両法の適用を受ける場合もあるので注意が必要です。

    図‐1 バーゼル法と廃棄物処理法の関係
    バーゼル法と廃棄物処理法との関係

     

    5.雑品スクラップ(金属スクラップ)


     図‐1の非有害物の有価物の欄に「雑品スクラップ」があります。雑品スクラップは金属スクラップとも呼ばれ、家電スクラップや工場等から出る解体した有価物で、鉄や銅等の金属を多く含み、その多くが中国や韓国に資源として輸出され、再利用されているのが現状です。2012年のデータでは、約900万トンの雑品スクラップが輸出され、これはバーゼル法に従った輸出量の約45倍にも達しています。
     鉄や銅等の非有害な有価物だけなら法律上の問題はありませんが、この中には家電リサイクル法対象の特定家電4品目や小型家電も不法に混在されているケースもあり、輸出先の解体場所や電線・ケーブルの野焼きで鉛やダイオキシン類による環境汚染が起きています。

     この現状を踏まえ、2017年3月10日閣議決定された「廃棄物処理法」は下記のように「雑品スクラップ」を取扱う事業者の届け出制度など規制強化の内容になっています。

    有害使用済機器の適正な保管等の義務付け

    人の健康や生活環境に係る被害を防止するため、「雑品スクラップ等」の有害な特性を有する使用済みの機器(有害使用済機器)について、これらの物品の保管又は処分を業として行う者に対する、都道府県知事への届け出、処理基準の遵守等の義務付け、処理基準違反があった場合等における命令等の措置の追加等の措置を講ずる。

     

    6.おわりに


     バーゼル法では「特定有害廃棄物」についてガイドラインにより規制廃棄物の分類や規制対象物質などが詳細に規定されていますが、それでも図‐1で表示した様に廃棄物処理法との間にグレーゾーンがあります。更には、これに「雑品スクラップ」が加わり、輸出入すべき廃棄物や有価物がどの法律で対応すべきか判断に迷うことがあると思います。廃棄物や有価物の輸出入を検討される場合、まずは地方自治体の関係部署にご相談されることを勧めます。

     

    (参考資料)
    1)「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律の一部を改正する法律案」の閣 議決定/経済産業省(平成29年3月10日)
    2)「廃棄物の処理及び清掃に関する法律を一部改正する法律案」の閣議決定/環境省 (平成29年3月10日)
    3)バーゼル条約及び法の概要等(再生資源の輸出入のガイドライン)/経済産業省


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