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前回の「2050年カーボンニュートラル」では、パリ協定での目標のために、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする必要があることをお話しました。
2021年10月31日から英国・グラスゴーで開催された第26回国連気候変動枠組条約締約国会合(COP26)では、2030年までの今後の決定的な10年の間に温室効果ガス排出削減をさらに推進していくことを改めて確認し「グラスゴー気候合意」が採択され、パリ協定のルールブックが完成しました。
「グラスゴー気候合意(COP26カバー決定)」とは、COP26として、気候変動対策の方向性と政治的メッセージを示す包括的な文書です。 議長国が各国意見を踏まえて起草し、その内容について各国が議論し、主なポイントとして以下の決定がなされました。
パリ協定の「ルールブック」議論の中で、「市場メカニズム」を扱うパリ協定6条が最後まで積み残されていましたが、今回、ルールがまとまりました。
第6条は、パリ協定に参加する国が温室効果ガスの排出量を削減するプロジェクト(再生可能エネルギーの導入や省エネルギーの推進、植林など森林関連のプロジェクト等)を通じて獲得したクレジット(二酸化炭素などの削減量)を、各国の温室効果ガス削減目標の達成に使用できるようにするための基礎となる仕組みです。
下記の3つが論点となって2018年から6年も持ち越され、ようやくパリ協定が完成したという運びです。
【論点と合意内容】
排出削減量の二重計上防止策: 日本提案である排出削減プロジェクトの実施国の政府が「承認」したクレジットのみをNDC等にて利用可とする案が採用
京都議定書下の市場メカニズム(CDM)の クレジットのパリ協定への移管: 2013年以降に登録されたクレジットが対象となる
市場メカニズムを通じた適応資金支援: 自主的貢献と報告義務で決定
2050年カーボンニュートラルに向けて、地球温暖化対策計画の改訂がなされ、2030年度に2013年度比で温暖化ガスの排出量削減目標26%だったのが、「46%」に改訂されました。46%削減に向けての各項目は下記のようになっています。各項目ともかなりハードルが上がったことになります。
図2:地球温暖化対策推進法に基づく政府の総合計画
※環境省 地球温暖化計画 概要より
改正温対法に基づき自治体が促進区域を設定 → 地域に裨益する再エネ拡大(太陽光等)
住宅や建築物の省エネ基準への適合義務付け拡大
2050年に向けたイノベーション支援 → 2兆円基金により、水素・蓄電池など重点分野の研究開発及び社会実装を支援
「2030年度までに100以上の「脱炭素先行地域」を創出(地域脱炭素ロードマップ)
優れた脱炭素技術等を活用した、途上国等での排出削減 →「二国間クレジット制度:JCM」により地球規模での削減に貢献
2050年カーボンニュートラルに向けて、今から2030年までの10年間の取組みが重要とされ、「決定的な10年間」と言われています。その最初のCOPという意味でCOP26が注目されていました。このCOP26で、何よりも世界全体で1.5℃を目指すことが確認された点は重要です。
日本は、2030年目標で全体の約2割を石炭でまかなうことを掲げており、石炭火力を廃止する意思がないとして、気候変動対策に後ろ向きな国に贈られる「化石賞」を会期中に受賞しています。そんな中、この目標を達成するには、国・企業・個人が同じ方向を向いて走り、社会システムの大改革が必要になります。どの方向にどうやって走るのか、具体策が急務です。2050年、今から想像もつかない仕組みになっているかもしれません。
(参考資料) ・改正地球温暖化対策推進法の概要(環境省資料) 2021年10月) |