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2015年12月の第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」は、2020年以降の地球温暖化対策を定めた国際的な協定です。
パリ協定では、現在までに世界のほぼ全ての国や地域が批准しており、温暖化ガス排出量の削減目標を提出することに加え、その達成に向けて国内対策を実施することが義務付けられています。パリ協定の目的である「世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して、2℃より充分低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求すること」を実行するために、2050年までに、世界の温暖化ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことが必要となっています。
気候変動問題の解決に向けて下記の3つのマイルストーンが掲げられています。
1.温室効果ガス排出量を2030年度までに2013年度比26%削減することを目指す。
2.世界のカーボンニュートラルだけでなく、過去に排出されたCO2の削減、すなわち
「ビヨンド・ゼロ」を可能とする革新的技術を2050年までに確立することを目指し、
世界全体でのCO2削減に貢献する。
3.2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち
2050年カーボンニュートラル、「脱炭素社会」の実現を目指す。
日本は、2020年10月に「2050年カーボンニュートラルを目指す」ことを宣言しました。
「排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」※ から、植林、森林管理などによる「吸収量」※ を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています。
カーボンニュートラルの達成のためには、温室効果ガスの排出量の削減・吸収作用の保全及び強化をする必要があります。
※人為的なもの
図1:カーボンニュートラルのイメージ 《脱炭素ポータル(環境省)より》
2020年10月30日に開催された第42回地球温暖化対策推進本部では、2050年カーボンニュートラルに向けた取組について議論が行われ、、「地球温暖化対策計画」、「エネルギー基本計画」、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」などの政策の見直しを加速し、全閣僚一丸となって取り組むという方向性が示されました。
その実現に向けて、政府や関係省庁は、様々な取組を進めていますので、ここに幾つかをご紹介します。
「グリーン成長戦略」では、2050年に向け、技術革新を通じて今後の成長が期待される14の産業において、高い目標を掲げた上で、現状の課題と今後の取組が明記されています。予算、税、規制改革・標準化、国際連携などあらゆる政策を総動員しての取組です。
脱炭素社会づくりに貢献する製品への買換え・サービスの利用・ライフスタイルの選択など、地球温暖化対策に資する「賢い選択」をしていく取組が進められています。 衣食住や移動といった、ライフスタイルに起因する温室効果ガスの排出量は、我が国全体の排出量の6割以上を占めるという分析があり、一人ひとりの行動がカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に影響しています。
「地域脱炭素ロードマップ」に基づき、2030年度までに少なくとも100か所の脱炭素先行地域を創出するとともに脱炭素の基盤となる重点対策が全国で実施されます。
2050年カーボンニュートラルを目指すゼロカーボンシティをはじめとする脱炭素化に向けた地域の取組に対し、/雄倏標・研修、⊂霾鵝Ε離Ε魯Α↓資金の観点から、国が積極的、継続的かつ包括的に支援するスキームが構築されます。
徹底した省エネルギーによるエネルギー消費効率の改善に加え、脱炭素電源により電力部門は脱炭素化され、その脱炭素化された電源により、非電力部門において電化可能な分野は電化されます。水素や、洋上風力など再生可能エネルギーを思い切って拡充し、送電線の増強が行われ、デジタル技術によりダムの発電を効率的に行われます。また、安全最優先で原子力政策を進め、安定的なエネルギー供給が確立されます。
「改正地球温暖化対策推進法」が2021年5月26日に成立し、「2050年までの脱炭素社会の実現」は法律にも位置付けられています。
2050年までのカーボンニュートラルの実現を法律に明記することで、政策の継続性・予見性を高め、脱炭素に向けた取組・投資やイノベーションを加速させるとともに、地域の再生可能エネルギーを活用した脱炭素化の取組や企業の脱炭素経営の促進が図られます。
今回の改正では大きく3つのポイントがあります。
(1)2050年までの脱炭素社会の実現を基本理念に位置付けた
(2)地方創生につながる再エネ導入を促進
(3) ESG投資にもつながる企業の温室効果ガス排出量情報の
オープンデータ化
現在、我が国は、年間で12億トンを超える温室効果ガスを排出しており、2050年までに、これを実質ゼロにする必要があります。このカーボンニュートラルの実現は、並大抵の努力では実現できず、エネルギー・産業部門の構造転換、大胆な投資によるイノベーションの創出といった取組を、大きく加速することが必要で、また、私たち個人個人の意識改革やライフスタイルの転換も必要になってきます。実現する2050年には、全く異なる資源やインフラを活用した社会になっていることが想像されます。
(参考資料) ・パリ協定に関する基礎資料(環境省 2021年10月) |