ニュースレター
知っておきたい最新情報を毎月お届けいたします。
2012年8月3日、「使用済み小型電子機器再資源化促進法」(以下、「小型家電リサイクル法」又は本法令という)が通常国会で成立しました。本法令の施行は2013年4月1日の予定となっています。
本法令は、使用済となった小型家電製品に利用されている貴金属、レアメタルやレアアース (以下、有用金属という) などの有用な資源のリサイクルを促す法令です。
本法令は「都市鉱山」と極めて関連があり、産出国の偏在やナショナリズムの台頭、新興国などの需要拡大による価格の高騰、などの理由で供給リスクの増加や最終処分場のひっ迫が主な制定理由であります。今回は、小型家電リサイクル法の概要を中心にまとめてみました。
都市鉱山の埋蔵量
大量に廃棄されている家電製品などの中には、有用金属などの資源が含まれており、これを鉱山に見立て都市鉱山と呼ばれております。下図は日本の都市鉱山の埋蔵量が世界の年間消費量の何年分を賄えるかを纏めたものです。このように世界の埋蔵量の10%を超える多数の有用金属が都市鉱山に埋蔵されております。
出典)独立行政法人 材料研究機構資料(2008年1月)
使用済小型家電製品の現状
小型家電製品には、レアメタルを使用するモーターなどのように、有用金属を用いた電子的部品が様々な製品に組み込まれております。
環境省は、1年間に使用済となる小型家電製品の重量は約65万トンで、含有金属は重量ベースで28万トン、金額ベースで840億円となり、有用金属別ではタンタル34トン、金11トン、銀69トン、パラジウム4トンなどと推計しております。
小型家電リサイクル法の概要
1)目的(第1条)
有用な資源が回収されずに廃棄されている現状に対して、使用済小型家電製品の再資源化を促進するための措置を講ずることにより、廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保を図る、というのが本法令の目的です。
2)制度の概要
市町村等が回収した使用済小型家電製品について、これを引取り、確実に適正なリサイクルを行うことを約束した者を国が認定して、廃棄物処理法の特例措置を講じる制度です。本制度のポイントは第10条及び第13条の規定です。
a)基本方針(第3条)
主務大臣(環境、経済産業)が、使用済小型家電製品の再資源化の促進に関する基本方針を策定、公表します。内容としては、再資源化の促進の基本的方向、量に関する目標、促進のための措置、個人情報の保護及び配慮事項等が明示されます。
b)再資源化促進のための措置(第10条)
再資源化のための事業を行おうとする者は、再資源化事業の、実施に関する計画(再資源化事業計画)を作成し、主務大臣の認定を受けることができます。
計画は下記の認定基準に適合する必要があります ・基本方針 ・主務省令基準 ・広域基準 ・事業者の能力・保有施設 |
c)廃棄物処理法の特例措置による事業の実施(第13条)
再資源化事業計画の認定を受けた者又はその委託を受けた者が使用済小型家電製品の再資源化に必要な行為を行うときは、市町村長等による廃棄物処理業の許可は不要となります。
「再資源化事業計画」の認定を受ければ、廃棄物処理業の許可は不要 消費者が廃棄した小型家電製品は、廃棄物の範疇を外れます |
但し、みなし規定があり、認定事業者及び認定事業者の委託を受けて業を実施する者は、一般/産業廃棄物の収集運搬業者や処分業者とみなされ、計画を逸脱して違法行為を行えば、廃棄物処理法の罰則規定が適用されることになります。
本法令の概要を下記のフロー図に示します。また、対象となる小型家電製品は21の分野に分類し、合計100品目以上を対象品目の例として挙げております。(表−1)
表−1 対象小型家電製品
カテゴリー |
代表的な対象品目 |
---|---|
携帯電話、パソコン | パソコン、携帯電話端末、スマートフォン、タブレット型情報通信端末 など |
ディスプレイ、プリンター | プリンター、モニター、キーボード など |
補助記憶装置 | ハードディスク、USBメモリなどの補助記憶装置、ゲームソフト など |
通信装置 | 電話機、ファクシミリ、カーナビ、ETC車載器 など |
電子辞書、電卓 | ワープロ、電子辞書、電卓 など |
映像機器 | ビデオレコーダ/プレーヤ、DVD・BDレコーダ、カーテレビ、ICレコーダ など |
音声機器 | CD・MDプレーヤ、デジタルオーディオ、ICレコーダ、補聴器 など |
カメラ | フィルム・デジタルカメラ |
家庭用ゲーム機 | 据置型・携帯型ゲーム機 など |
電気光学機器 | スライド映写機、プロジェクタ、ビデオプロジェクション など |
空調用電気機械器具 | 扇風機、空気清浄器、除湿器 など |
電熱器具 | 電気アイロン、電子レンジ、電気ストーブ、炊飯器、電気カーペット、 など |
電気掃除機 | 電気掃除機、ハンドクリーナー など |
調理用電気機械器具 | ミキサー、ジューサー、フードプロセッサー、コーヒーミル など |
計量用・測定用電気機械器具 | 電子式ヘルスメーター、電子式調理用はかり、デジタル歩数計 など |
電気マッサージ器 | 家庭用電気マッサージ器、家庭用電気・光線治療器、家庭用磁気・熱療法治療器 など |
電気照明器具 | 照明器具、携帯用電気ランプ など |
電動工具 | 電気ドリル、電気グラインダ、電気ポリッシャ など |
電子・電気楽器 | 電子キーボード、電子・電気ギター など |
その他の小型電子機器等 | ヘアードライヤー、電気カミソリ、食器洗い乾燥機、時計、電動歯ブラシ、電動ミシン など |
上記の付属部品 | リモコン、ACアダプタ、プラグ・ジャック、ケーブル、充電器、ゲーム用コントローラ など |
出典)第24回産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会資料
おわりに
1)小型家電リサイクル法の特徴は、国や自治体が制定したルールの順守ではなく、再資源化の事業を行おうとする事業者自らが作った「再資源化事業計画」のルールを順守することにあります。ただし、主務大臣が公表した基本方針を満たした「再資源化事業計画」であること、及び計画に則っているかの確認(実施状況の報告や立入検査)は行われます。
2)この法令は廃棄物処理法と極めて密接な関係にあり、「再資源化事業計画」を逸脱した場合には廃棄物処理法が適用されます。言い換えると、「再資源化事業計画」のルールに従って収集・処理が行われればそれはあくまで「使用済小型家電」であるが、ルールを逸脱した途端「廃棄物」になることを意味します。
「再資源化事業計画」が認定されれば廃棄物処理業の許可は不要とは言え、事業環境としては廃棄物処理業者が参入しやすい法令といえます。
今後は、省令公布や主務大臣の基本方針公表及び市町村と認定事業者候補者との調整などのスケジュールを経て、2013年4月に本法令が施行される予定です。
(参考資料) |