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中国をはじめ東南アジア諸国、インド及びインドネシアなど、日本企業の進出が盛んなアジア諸国で大気汚染が深刻な状況になっております。特に、人口が集中する大都市では、自動車の急増や除去設備の不十分な工場などが汚染源と考えられ、肺などの呼吸器系の健康被害が拡がっております。
日本でも中国から「黄砂」や「大気汚染物質」、特に最近では「浮遊粒子状物質」の中で「PM2.5」と呼ばれる粒径の非常に細かな汚染物質が飛来し、各地で観測体制を強化し注意を促すニュース等が報道されております。日本には中国以外の国からの大気汚染物質は風の向きが異なるためほとんど飛来しません。上空を流れる偏西風や西から東に向かう気圧の移動に伴って、PM2.5の様な極めて軽い汚染物質が日本に運ばれているのです。
(PMとは粒子状物質の英文の頭文字。数値は粒径を示し、単位はマイクロメーター(μm))
今回は、PMと呼ばれる大気汚染物質を中心に纏めてみました。
アジアにおけるPM2.5の発生予測
九州大学では、「SPRINTARS」というコンピュータシステムを用いて「浮遊粒子状物質」による大気汚染状況の予測をシュミレーションしております。アジアでのPM2.5の予測は下記のサイトで知ることができます。
PMに関する概要
「浮遊粒子状物質」には上図のように、粒子径が概ね10μm以下の「PM10」、粒子径が6.5〜7.0μmに相当し日本独自の大気汚染の指標として用いられる「SPM」、粒子径が概ね2.5μm以下の「PM2.5」などがあります。世界では、「PM10」とともに「PM2.5」が大気汚染の指標とされております。
1. PM発生のメカニズム
工場からの排煙や自動車の排気ガスから排出される浮遊粒子状物質(これを「一次粒子」と云います)の他に、人為的に大気に排出された様々な汚染物質が接着剤として働いて浮遊粒子状物質を形成したり、オゾンの作用で浮遊粒子状物質に変化するなどの「二次生成粒子」もあります。また、火山、黄砂や花粉など自然由来の浮遊粒子状物質もあります。
PM2.5の主な発生源と大気中の挙動(概念図)
2. 健康への影響
浮遊微粒子を吸い込んだ場合、鼻、喉、気管、肺の呼吸器に達し、そこに沈着することで健康に影響を及ぼします。粒径が小さいほど肺の奥まで達しやすく、5μm以下の粒子は肺胞にまで達する可能性があります。逆に1μm程度になると、あまりにも軽すぎて約8割が呼吸で排出されると言われております。
アレルギー症状やぜんそくなどの呼吸器系の病気が増え、重症化するに従い肺機能の低下、呼吸困難や肺気腫などを発症するとされております。
3. PMの環境基準
日本では、大気汚染物質を規制する主な法律としては、工場やごみ処理場などの固定設備に関する「大気汚染防止法」や移動排出源である自動車に関わる「自動車NOx・PM法」がよく知られております。日本の規制基準値及びWHOのガイドラインを表記します。
4.各都市のPM10の大気中の濃度
WHOのデータベースに基づいて作成した世界の主要都市のPM10を下図に示します。
日本企業の進出が盛んな中国からインドや東南アジアにかけて深刻な大気汚染による環境悪化が拡大しております。
この背景には、急速な経済成長による人口集中で自動車等の交通機関の急増や環境設備が不備な工場の乱立、冬場の暖房用の化石燃料、特に石炭の使用などによると言われております。
おわりに
中国、インドや東南アジアなどの新興国での大気汚染は一国に留まらず国境を越えた越境する環境汚染と云えます。
また、化石燃料の燃焼に起因する大気汚染ですから地球温暖化と表裏一体の関係にあると言えます。
1)中国では、マスクや特に日本製の空気清浄機が大きく販売を伸ばしている報道がありました。そのこと自体は日本製の性能が認められたと大変に結構なことですが、根本的な解決を図らない限り、これからも日本への大気汚染は避けられません。
2)日本は1960年代から1970年代の経済成長期に「四日市ぜんそく」や「光化学スモッグ」など大気汚染に関わる公害が発生し、規制基準の強化、排煙の脱硝・脱硫技術やエコカーの普及など多様な環境技術の発達で現在に至っております。
3)日本政府は、日本の優れた環境技術をアジア諸国の環境対策に貢献すべく、政府によるトップセールスで民間の環境ビジネスの後押しを行う官民一体化・連携政策を打ち出しておりました。前民主党政権の「グリーンイノベーション」やそれ以前の自民・公明政権の一大政策でした。安部政権はまだ環境に関わる成長戦略を打ち出しておりませんが、「低炭素化政策」とこれに関わる政策は不変と考えられます。
政府・自治体が率先かつ迅速なトップセールスを行い、民間企業が技術に裏付けされた環境ビジネスを展開できれば、アジア諸国の大気汚染防止に貢献するとともに、より一層の信頼関係の構築が期待されます。アジア諸国の環境に関する継続的発展(サステナブル・デベロップメント)は日本への継続的発展にもつながります。