1928年、「フロン」が開発され、開発当初は20世紀最大の発明とまで云われました。
フロンは、無色・無臭、安全性の高い不燃性の気体で安価に製造できるため、冷蔵庫などの冷媒、電子部品の洗浄、スプレーなど様々な製品に使用されてきました。ところが、廃棄された製品から残留フロンが大気に排出され、オゾン層を破壊して人類をはじめ地球上の生物に健康被害を及ぼす「オゾンホール」の形成・拡大をもたらしました。
その後、オゾン層破壊効果の少ない「代替フロン」が主流となりましたが、「温暖化係数(GWP)」がCO2の数百〜1万倍超にもなり、地球温暖化防止のため低GWP冷媒を用いた製品開発が課題になってきました。(図‐1:代替フロン等の排出量推移ご参照)
政府は、代替フロンによる地球温暖化を抑えるため公布後2年以内の施行を目指して改正「フロン回収・破壊法」を国会に提出しました。今回は、「フロン回収・破壊法」について纏めてみました。ここではフロン及び代替フロンをフロン類と総称します。
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改正「フロン回収・破壊法」の概要
現行法は、業務用冷凍空調機器(以下、特定機器という)から使用済みフロン類の回収・破壊のみが対象でした。
改正法は、現行法に加え、製造から廃棄までのライフサイクル全体が対象となります。
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1. 目標年度を定めて自然冷媒や低GWP冷媒に転換
(フロンメーカー、製品メーカー)
フロン類使用製品について、製品ごとに一定の目標年度までに自然冷媒又は低GWP冷媒(次世代冷媒)を使用した製品への転換を促しております。
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2. 特定機器の冷媒の適正管理(使用者)
機器の定期点検によるフロン類の漏えい防止、不調・故障時の迅速な点検・修理やフロン類充てん量把握等の適切な管理が要求されます。一定の要件に該当する機器についてはフロン類の漏えい量の年次報告が必要になります。
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3. フロン類の充填・回収(第1種フロン類充填回収業者)
現行法では使用済みフロン類の回収・破壊を対象にしているにも拘らず、フロン類の回収率は30%前後(目標:60%)と低迷しています。改正法では、回収率向上のため、以下の管理方法が追加されております。
1)特定機器にフロン類を充填する必要が生じた場合、都道府県知事により登録された
「第1種フロン類充填回収業者」に依頼する。
2)「第1種フロン類充填回収業者」はフロン類充填量または回収量を書面にて使用者に交付し、
充填または回収量の記録を整備する。
3)「第1種フロン類充填回収業者」は、回収フロン類を「第1種フロン類再生業者」
または「フロン類破壊業者」(いずれも主務大臣の許可制)に確実に引き渡す。
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4. フロン類の再生・破壊(第1種フロン類再生業者、フロン類破壊業者)
現行法は、破壊のための「フロン類破壊業者」のみでしたが、改正により「第1種フロン類再生業者」が追加されました。
これは、再生利用によりフロンメーカーの新規製造量を削減する狙いがあります。
1) 「第1種フロン類再生業者」はフロン類を再生した時、「第1種フロン類充填回収業者」に
再生したことを証する書面を交付し、再生量を記録する。
2) 「フロン類破壊業者」はフロン類を破壊した時、「第1種フロン類充填回収業者」に
破壊したことを証する書面を交付し、破壊量を記録する。
用語の定義など
(1)特定機器:
法律では、我が国において大量に使用され、かつ、冷媒として相当量のフロン類が充てんされている機器、と定義されております。本法令で規定される特定機器は「第1種特定機器」で、業務用のショーケース、冷凍機、空調設備機器、自
販機、ビルの解体で廃棄される空調設備機器等に用いられるフロン類が対象となり
ます。ちなみに、第2種特定機器はカーエアコンで、こちらは「自動車リサイクル
法」で規定されております。また、家庭用のエアコン、冷蔵庫などは「家電リサイク
ル法」の対象となります。
(2)自然冷媒:
フロンのように人工的に作られた物質ではなく自然界に元々ある物質で冷媒としての性質を持つものをいいます。代表的には、アンモニア、CO2、イソブタンなどの炭化水素、またはこれらの混合物が自然冷媒として知られております。
(3)オゾンホール:
地上10〜50匸絛の成層圏に層を形成しているオゾン層がフロン類などにより破壊され消失した現象を云います。この結果、有害紫外線(紫外線B)の地上への到達量が増えて、地球上の生物に健康被害を及ぼすと言われております。
おわりに
ヨーロッパなどでは、既に自然冷媒を使用した冷蔵庫が販売されており、日本にも輸入されております。日本では、渋谷ヒカリエ内の冷凍機はCO2冷媒が使われており、ローソンやイオングループもCO2冷媒の冷凍機の導入を開始しております。
今後、オゾン層破壊や地球温暖化を防ぐため、自然冷媒などの次世代冷媒を使用した機器が「フロン回収・破壊法」の改正によって主流になるものと予想されます。
冷媒充填量が少ない家庭用のエアコンでも、1台のエアコンからフロン類が排出された場合の温室効果は、ガソリン車が地球半周分を走行したに等しいと言われております。いずれ家電製品も自然冷媒などの次世代冷媒を使用した製品が主流になると予想されます。