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前24回では健康被害や環境破壊を惹き起こす水銀化合物(以下、水銀と略記)の国際的な規制ルールを定めた「水俣条約」について報告しました。日本でも「水俣条約」の規制ルールを担保するため、関連する環境法令が改正されておリます。今回は、水銀廃棄物の適正な管理を確保するため改正された「廃棄物処理法の施行規則」について、水銀廃棄物に係る改正事項を纏めてみました。
本規則は2017年6月9日に公布され、同年10月1日から施行されました。
機チ竿未砲錣燭辰峠綣蕕垢戮規定及び定義
(1)保管基準の規定化
水銀廃棄物の保管にはその旨を掲示するとともに、他の廃棄物と混合しないように仕切り等を設けることが必要になります。
(2)「水銀使用製品」産業廃棄物及び「水銀含有ばいじん等」の定義
(2)-1 以下の項目が水銀使用製品産業廃棄物として定義されました。
1)表‐1に示す水銀使用製品。
2)赤字で示した水銀使用製品を材料や部品に用いた製品。
3)水銀の使用が表示されている水銀使用製品
表‐1 水銀使用製品
水銀使用製品 |
|
水銀電池 | 水銀ボイラー(二流体サイクル用に限定) |
空気亜鉛電池 | 灯台の回転装置(水銀槽式回転機械) |
スイッチ及びリレー(水銀が見える製品に限定) | 水銀のトリム・ヒール調整装置 |
蛍光ランプ(含:冷陰極及び外部電極ランプ) | 水銀抵抗原器 |
HIDランプ | 差圧式流量計 |
放電ランプ(蛍光及びHIDランプを除く) | 傾斜計 |
農薬 | 周波数標準機 |
気圧計 | 参照電極 |
湿度計 | 握力計 |
液柱形圧力計 | 医薬品 |
弾性圧力計(ダイアフラム式に限定) | 水銀の製剤 |
圧力伝送器(ダイアフラム式に限定) | 塩化第一水銀の製剤 |
真空計 | 塩化第二水銀の製剤 |
ガラス製温度計 | よう化第二水銀の製剤 |
水銀充満圧力式温度計 | 硝酸第一水銀の製剤 |
水銀体温計 | 硝酸第二水銀の製剤 |
水銀式血圧計 | チオシアン酸第二水銀の製剤 |
温度定点セル | 酢酸フェニル水銀の製剤 |
顔料 | ― |
(2)-2 以下の項目が水銀含有ばいじん等として定義されました。
1)ばいじん、燃え殻、汚泥、鉱さいであり、水銀を15mg/kgを超えて含有。
2)廃酸、廃アルカリであり、水銀を15mg/Lを超えて含有。
(2)-3 水銀使用製品産業廃棄物及び水銀含有ばいじん等の収集運搬や処分を委託する場合は、
許可されている業者に委託する必要があります。
(3)水銀使用製品産業廃棄物から水銀回収の義務化
下記の廃棄物は回収が義務付けられていますが、回収処理を委託する場合、水銀回収が可能な事業者に委託する必要があります。
1)表‐2に示す水銀使用製品産業廃棄物。
2)水銀を1,000mg/kg以上含有するばいじん、燃え殻、汚泥、鉱さい。
3)水銀を1,000mg/L以上含有する廃酸、廃アルカリ。
表‐2 回収が義務化された水銀使用製品
水銀使用製品 |
|
スイッチ及びリレー | 灯台の回転装置 |
気圧計 | 水銀のトリム・ヒール調整装置 |
湿度計 | 差圧式流量計 |
液柱形圧力計 | 浮ひょう形密度計 |
弾性圧力計(ダイアフラム式に限定) | 傾斜計 |
圧力伝送器(ダイアフラム式に限定) | 積算時間計 |
真空計 | ひずみゲージ式センサ |
ガラス製温度計 | 電量計 |
水銀充満圧力式温度計 | ジャイロコンパス |
水銀体温計 | 握力計 |
水銀式血圧計 | ― |
(4)マニフェストなどへの記載義務
水銀使用産業廃棄物及び水銀含有ばいじん等が含まれている場合、その旨の記載が義務化されました。
1)2017年10月1日以降、新規に産業廃棄物処理委託契約を締結する場合。
2)マニフェスト伝票への記載事項、電子マニフェストへの登録事項。
3)行政にマニフェスト伝票交付実績報告への記載。
(5)特別管理産業廃棄物となる廃水銀等
検査業や商品検査業など10分類した施設から生じた廃水銀等は「特別管理産業廃棄物」に指定されました。
供ゼ集・運搬・処分を実施する事業者が遵守すべき規定
(1)特別管理一般廃棄物の処分基準の追加
収集運搬業者、処分業者は水銀処理物に関する事項を帳簿に追加記載する必要があります。
(1)-1 収集運搬業者
・収集又は運搬年月日
・収集区域又は受入れ先
・運搬方法及び運搬先ごとの運搬量
(1)-2 処分業者
・受入れ又は処分年月日
・受入れした場合、受入れ先ごとの受入量
・処分した場合、処分方法ごとの処分量
・埋立てや海洋投入処分を除き、処分後の廃棄物の持出し先ごとの持出し量
(2)一般廃棄物の積み替え保管場所での追加事項
積み替え保管場所では、水銀処理物が一般廃棄物に含まれる場合、掲示板にその旨を記載する必要があります。
(3)水銀処理物の埋立て処分に係る判定基準の追加
水銀処理物が下記の事項を満たす場合、追加的措置をとった管理型最終処分場で処分が可能となります。これを「基準適合水銀処理物」と云い、満たさない場合には遮断型最終処分場で処分することになります。なお、特別管理産業廃棄物についても同様です。
(3)-1 「アルキル水銀」の場合には不検出。
(3)-2 水銀処理物の場合、溶出試験の結果で検液1Lにつき0.005mg以下。
(4)「基準適合水銀処理物」の追加的措置
(4)-1 最終処分場の中で、一定の場所で、かつ、分散させない。
(4)-2 流出しないこと及び雨水が侵入しないような措置を講じる。
(5)廃水銀等を硫化処理できる処理施設に対する追加基準
今回、廃水銀等の硫化処理施設は産業廃棄物処理施設に追加されました。
(5)-1 処分する廃水銀等の性状を分析できる設備を備えていること。
(5)-2 技術上の基準
1)事故時における流出防止提の設置、水銀が地盤に浸透しない構造。
2)硫化処理施設における反応槽に関する規定や施設の維持管理。
3)生活環境保全から水銀ガス処理設備の設置。
(5)-3 維持管理基準
1)水銀と硫黄の均一な化学反応できる装置。
2)反応槽の負圧化。
3)水銀ガスによる生活環境の保全の確保。
(5)-4 処理した廃水銀等の月ごとの数量の公表。
掘ズ能処分場を維持管理する事業者が遵守すべき規定
(1)基準不適合水銀処理物を一般廃棄物の最終処分場処分する場合の記録事項及び
公表すべき維持管理状況
(1)-1 埋立てた水銀処理物の各月ごとの数量。
(1)-2 地下水等の水質検査。
・採取場所、採取年月日、検査結果及び結果判明年月日の記録。
(1)-3 水質悪化が認められた場合の原因調査や生活環境の保全上必要な措置。
・措置の内容及び措置を講じた年月日
(1)-4 内部仕切り設備及び覆いの点検。
・点検年月日とその結果、損壊が発生している場合又は保有水の浸出の恐れがある場合の措置内容や措置年月日。
(1)-5 残りの埋立て容量に関する測定及び測定年月日。
(2)一般廃棄物の最終処分場で埋立て処分の終了や廃止する場合
水銀処理物が埋め立てられている位置を示す図面を追加記載する。
(3)産業廃棄物の最終処分場で埋立て処分の終了や廃止する場合
水銀処理物が埋め立てられている位置を示す図面を追加記載する。
今回は、「水俣条約」の発効を受けて改正された「廃棄物処理法の施行規則」について、水銀廃棄物に係わる追加規定を中心に纏めてみました。
水銀廃棄物が含まれる場合、掲示や他の廃棄物との混合防止策、マニフェスト伝票への記載など順守すべき規定が明確になりました。
また、金属水銀はこれまで有価物として取り扱われることが一般的でした。しかしながら、水銀の使用を極力減らそうという世界の動向から、硫黄と反応させる硫化処理施設が新たな産業廃棄物処理施設として設定されたものと思います。水銀処理物を埋立てる際の判定基準化やどの場所に埋立てたかの図面管理など、追加で規定化された内容によって健康被害や環境破壊の防止に繋がることを期待します。
(参考資料) |