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2016年12月、自民党の税制調査会で地球温暖化対策の一環として市町村の森林整備の 支援を目的に「森林環境税(仮称)」を創設する方針が打ち出されました。2017年11月、一人年間1,000円程度の「森林環境税」を徴収する方向で検討に入った、との報道があ りました。政府・与党は、多くの国民が森林の恩恵を受けているとして、全ての個人住民税の納税者(現在約6,200万人)を対象に「森林環境税」を徴収することを検討してお り、税額を1,000円とすると年620憶円の税収となります。今後、与党の税制調査会で 詳細を詰め、2018年度「税制改正大綱」に導入時期などを盛り込むことを目指すとして います。今回は「森林環境税」について纏めてみました。
森林の役割には、「地球温暖化防止」、「災害防止」、「水資源貯蓄」、「空気清浄」、「癒しの場の提供浄」及び「木材などの林産物の生産」等が挙げられると思います。また、森林からの栄養分が川や海の生き物を育んで、海では漁場を育てる非常に重要な役割も果たしています。
(独)森林総合研究所は、日本の森林は年間約0.9億トンのCO2を吸収している、と報告しております。針葉樹に代表されるスギ、ヒノキ等の人工林からは年間約0.6億トン、広葉樹に代表されるナラ等の天然林では年間約0.3億トンの吸収と推算しております。GHG排出量は年間約13.5憶トンですから、GHG排出量の約6.7%は森林によって吸収されております。
一方、森林は国土の67%を占め、「緑のダム」としての「公益的機能」の働きは計り知れません。土壌が雨水を貯留し、河川に流れ込む水量を平準化して洪水を防止する働きと川の流量を安定させる機能を持っています。裸地に比べ森林は
約3倍の保水力を持つと言われています。
このような森林の役割も間伐や伐採など人手を掛けて整備しなければその効果は少なくなります。今回の「森林環境税」は森林整備の財源に充てるのが狙いです。
「森林環境税」の徴収と配分のイメージを下図に示します。
国が税金を徴収し、森林現場に近い市町村が主体となって整備事業等を推進していくことになります。
1.財源の使い道
1)市町村による森林の荒廃対策
…所有者及び境界が不明な森林、高齢化による
担い手不足で林業・山村が疲弊
・間伐など所有者への働きかけの強化、間伐の代行
・市町村が管理できる森林の拡大や林道整備
2)CO2吸収源対策のための森林保全
・新規植林、再植林、間伐の実施
3)木材使用促進
4)林業技術者の担い手育成
5)森林保全のためのボランティア・NPOの支援
2.課題
1)森林整備を目的とした税金制度は、すでに37道府県と横浜市が導入しております。自治体の税金と今回の「森林環境税」の棲み分けや区分けをどうするかよりも、まずは二重課税(横浜市民は三重課税)の不公平感解消が先決と思います。
2)森林の役割は、前述したように「公益的機能」です。しかしながら、その効果を実感することはなかなか難しいと言えます。森林の効果が実感しづらいだけに、財源が無駄に使われることのないよう透明性ある仕組みが必要だと思います。森林整備の名目で特定の業種に対する補助金のような性質を持ち、その業種だけがメリッ
トを享受するのでは問題があります。
2024年度に導入予定の「森林環境税」について纏めてみました。森林整備に関する税は、1986年の林野庁による「水源税」に始まり、何度も俎上に上りましたが、実現しませんでした。
今回、政府・与党は、「森林のCO2吸収源の役割のための森林整備」と「荒廃した山間部の条件の悪い地域の森林整備」に必要な財源を充てる、としております。
森林の役割は前述したように「公益的機能」です。普段の私達の生活でその効果を実感することが難しい中、どちらつかずの曖昧な政策に基づいて特定の施策に財源が使われないよう透明性ある仕組みが必要だと思います。
(参考資料) |