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第32回「オゾンホールの消滅」

    環境ショートレポート

    1.はじめに

    太陽からの有害紫外線を吸収し、地上の生態系を保護する役割を果たすオゾン層保護の国際的な取り組みは、1985年に採択された国際的な対策の枠組みを定めた「ウィーン条約」と1987年に採択されオゾン層を破壊する恐れのある物質を規制した「モントリオール議定書」がよく知られております。

    日本では、「ウィーン条約」「モントリオール議定書」を遵守するため、「オゾン層保護法」「フロン排出抑制法」が制定されております。

    最近のNASAによると、1987年に採択された「モントリオール議定書」以降、「オゾンホール」の面積は着実に縮小して21世紀末までには実質的に消滅する、という調査結果が発表されました。

    様々な地球環境が悪化していく中、全世界が纏まって対策を実行すれば、地球環境が改善されつつある事象ではないかと思います。

    2.オゾン及びオゾンホール

    オゾン(O3)は酸素分子(O2)に酸素原子(O)が結合してできる極めて反応性の高い化合物です。

    オゾンは地上10〜50匸絛の成層圏に存在しますが、地球上を層状に取り巻いて存在しているわけでなく、成層圏の中でオゾン濃度が高く存在している箇所をオゾン層といいます。オゾンをすべて地上に集めて0℃の状態で計算すると約3个慮みにしかならない程少量しか存在しないと云われております。

    20世紀に入り冷蔵庫やクーラーなどの冷媒やプリント基板の洗浄剤として使用されてきたフロンや塩素化合物が大気中に放出され、紫外線の作用で生成した塩素原子がオゾンの分解を著しく促進させました。この結果、オゾン濃度が低下することで人工衛星から見るとオゾン層に穴が開いたように見えることから、「オゾンホール」と呼ばれました。

    3.紫外線

    オゾンの重要な役割は太陽からの有害紫外線を吸収することです。「オゾンホール」が発生すると有害紫外線が地表に到達しやすくなり、皮膚がんなどの健康被害や生物にとっても極めて悪影響を及ぼします。

    私達は可視光線のうち波長の短い光を紫色として感じますが、それより更に波長の短い光は知覚できません。可視光線の紫色の外側という意味で紫外線と言われております。紫外線の中で200〜380nmの波長にある紫外線を近紫外線と呼び、次の3種類に分類でき、波長が短くなる程生物に害を及ぼす有害紫外線となります。

    種 類 波 長(nm) 特 徴
    UV-A 315〜318 地表に到達する紫外線の約95%がUV-Aです。冬季や朝夕でもあまり減衰せず、皮膚の真皮層に作用してたんぱく質を変性させます。皮膚の弾性を失わせ老化を促進する作用があります。
    UV-B 280〜315 オゾン層に吸収されやすく、地表に到達する紫外線の約5%がUV-Bです。UV-Bは表皮層に作用し、メラニンを生成して、いわゆる日焼け症状を起こします。この際ビタミンDを生成する有用な働きもあります。
    UV-C 200〜280 有害紫外線の代表格で、オゾン層で吸収され通常は地表に到達しません。強い殺菌作用があり、生体に対する破壊性が最も強く、オゾン層が破壊されて地表に到達したら、生物に著しい悪影響を与えます。

    4.日本の対応する法令

    オゾン層保護に関する日本の法律は前記した通り1988年制定の「オゾン層保護法」と2015年制定の「フロン排出抑制法」があります。なお「フロン排出抑制法」は、本レポート第16回で記載した「フロン回収・破壊法」が名称を変えて制定された法律で、詳細については第16回レポートをご参照ください。2つの法律の概要をまとめると下表のようになります。

    表.オゾン層保護に関する日本の法令の概要

    主 体 オゾン層保護法 フロン排出抑制法
    フロン類 製造事業者 ・許可が必要 ・フロン類の使用の合理化に取り組む
    合理化:フロン類の地球温暖化係数(GWP)の低減、フロン類に代わる物質の製造に必要な設備や技術の向上
    輸出入業者 ・輸入の承認が必要
    ・前年の輸出総量を経済産業大臣に届け出が必要
    フロン類 ・使用にあたり特定物質の排出抑制及び使用の合理化に努める  
    フロン類使用機器 製造事業者   ・フロン類の使用の合理化に取り組む
    合理化:フロン類のGWPの低減、製品の設計・製造等でのフロン類の充填量の低減、フロン類などに関する表示内容の充実
    輸出入業者  
    管理者・使用者   ・使用の際、フロン類の漏洩防止
    ・規定以上に漏洩した場合、算定漏洩量等の国への報告
    ・充填又は回収の第一種フロン類充填回収業者への引き渡し
    ・フロン類の引き渡しを設備
    ※使用機械の原動機出力により、
      1年〜3年ごとの点検
      3ヶ月ごとの自主点検管理
    充填回収業者   ・都道府県への登録が必要
    ・フロン類充填・回収基準の準拠
    ・回収フロン類を第一種フロン類再生業者又はフロン類破壊業者に引き渡す(自ら再生しない場合)
    破壊業者・再生業者   ・環境及び経済産業大臣の許可が必要
    ・フロン類再生又は破壊基準の準拠

    5.おわりに

    今回は、太陽からの有害紫外線を吸収し、地上の生態系を保護する役割を果たすオゾンについて纏めてみました。NASAの調査からオゾンホールの面積が減少してきていることは非常に喜ばしいことです。オゾンホール解消に向け世界の国々がフロン類の排出規制に取り組んだ結果の現れだと思います。是非とも異常気象をもたらしている地球温暖化など地球環境の解決に向け、全世界が協同で解決に取り組んで欲しいものです。

    (参考資料)

    ・オゾン層の状況(環境省 2016年1月)

     

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