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出典:RE100
地球温暖化対策を所管する環境大臣は2018年5月22日、環境省で使用する電力を100%再生可能エネルギー(以下、再生エネと略記)にし、再生エネ100%を推進する国際的ネットワーク「RE100」への加盟も検討すると表明しました。外務大臣が5月15日、環境大臣の表明に先立ち、外務省として「RE100」への加盟を目指す考えを表明しておりました。「RE100」とは、エネルギー(電力)を100%再生エネで調達することを目標に掲げる企業のネットワークで、Renewable Energy 100%の頭文字から「RE100」と命名されています。2014年、国際環境NGOのThe Climate Group(TCG)が当時の英国首相の支援を受けて「RE100」を設立したもので、2018年3月時点で「RE100」には世界規模のグローバル企業130社が加盟し、うち日本企業は6社が加盟しております。今回は「RE100」を中心に纏めてみました。なお、ここで定義される再生エネは「水力」、「太陽光」、「風力」、「地熱」、「バイオマス」を指し、「原子力」は含まれません。
地球温暖化の防止のために、日本でも再生エネの電力利用を目標に掲げる企業が増えてきました。2016年4月電力小売り事業が全面自由化され、電力会社を自由に選べる時代に入りましたが、積極的に再生エネの電力を使う企業は少ないのが現状だと思います。日本の場合、欧米に比べて再生エネ電力の比率が低くコストが割高なことが背景にあると思います。再生エネの電力コストが下がれば、企業の社会的責任(CSR)の中で、環境価値を高める活動として再生エネ電力を積極的に使いたい企業も増えてくると思います。一方、「RE100」加盟企業や欧米の企業経営者は、地球温暖化の防止に貢献するという基本思想に加え、環境価値を高める企業経営が機関投資家の投資に繋がると考えております。
RE100加盟の条件には、以下を満たすことが必要です。
1)100%再生エネで電力を賄うことを宣言する。
2)その達成時期と必要なら中間目標を掲げる。例えば、2050年に100%達成、2030年には再生エネの電力を50%にする。
3)毎年「CDP気候変動」の質問票フォームにて、進捗状況を事務局に提出する。
4)進捗内容については第三者による監査を受ける必要がある。
再生エネ100%達成の方法
1)発電事業者又は仲介供給者から再生エネを購入する
2)電力会社とのグリーン電力契約、発電事業者との電力購入契約(PPAs)、グリーン電力証書を購入する
3)自社もしくは他社の設備によって、再生エネの電力を発電する。「RE100」では、再生エネの電力を一括りにするのではなく、どの再生エネの電力なのか特定出来なければなりません。
「CDP気候変動」の「CDP」は2000年に設立されたプロジェクトで、「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト」から「CDP」に名称変更した国際NGOです。「CDP」は欧米の有力な機関投資家と連携して、世界の主要企業に対してCO2排出量削減や気候変動の取組に関する環境情報を質問書の形式で送付・収集し、回収された質問書の回答を分析、評価することで、企業の取組情報を共通の尺度で公開するプロジェクトです。この結果をもとに機関投資家は企業の環境価値を判断して、現在では約100兆米ドル超の資産を運用しているとのことです。
日本でも海外の投資家や取引先から、再生エネの電力比率を高めることが求められるようになってきました。再生エネの電力を賄うには、自家発電の他に「グリーン電力証書」や「J−クレジット」があります。新たに2018年5月、「非化石証書」の取引が始まりました。この制度は、「FIT固定価格買取制度(FIT)」で買い取った再生エネの電力(以下、FIT電気という)を入札制で売買するものです。概要を表に纏めます。
名称 | グリーン電力証書 | J-クレジット | 非化石証書 |
発行元 | グリーン電力証書発行事業者 (経産省、環境省) |
国 (経産省、環境省及び農林水産省) |
低炭素投資促進機構 (国が指定した費用負担調整機関) |
対象再エネ | 太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス | 太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス | 太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス (但し、どの再エネかは特定できない) |
購入対象者 | 企業、自治体など | 企業、自治体など | 小売電気事業者 |
購入方法 | 発行事業者から購入 | J-クレジットが実施する入札で購入 J-クレジット保有者から購入 |
非化石取引市場で入札で購入 |
発行量 | 3億1100万kwh *) | 15億kwh *) | 500億kwh以上 |
価 格 | 3〜4円/kwh *) | 0.5円/kwh *) | 1.3円/kwh |
*)2016年度実績
グリーン電力やJ-クレジットの電力量は限定的で、再生エネの電力を増やしたい企業には不十分です。一方、FIT電気の場合電力量は多いものの、どの再生エネの電力なのか分かりません。欧米では電気設備が特定されないと再生エネ電力とみなされていないからです。政府はFIT電気の非化石証書を再生エネ電気と認める様に欧米各国に働きかけしておりますが、未だ流動的です。
日本のRE100加盟企業は現在6社ですが、将来的には50社程度と予想されております。RE100加盟企業の子会社などは当然ですが、サプライチェーン等取引先企業にも波及する可能性があります。既にRE100加盟企業の中には自社製品に供給するサプライヤーに対して再生エネの使用を推進しており、「クリーンエネルギープログラム」という支援策を設置している加盟企業もあります。
今回は環境及び外務大臣の表明をもとに、地球温暖化防止のための環境経営として企業価値を高める「RE100」を中心に纏めてみました。日本は使える再生エネ電力が少ないため加盟企業も6社にとどまり、これからの経営活動だと思います。再生エネ電力を特定できなければ再生エネ電力と認めない世界ルールに対して、日本独自の「FIT電気の非化石証書」システムを稼働させましたが、現状はガラパゴス状態です。世界の有力な機関投資家が日本企業に目を向けるにはもう少し先になるかもしれません。