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宇宙から見た地球は約7割が水で覆われ、青色に輝いて「水の惑星」と呼ばれています。約14憶k?存在すると言われる水のうち98%は海水で、淡水は2%にすぎません。そのうち私達が飲み水などに利用出来るのは全体の0.01%に過ぎないといわれております。また地球温暖化による海面上昇で淡水量は減少傾向になっています。現在、水資源の危機から、約7億の人々が水不足に苦しんでいると言われています。国連の2017年資料によると、2030年には世界の人口は86億人、2050年には98億人と予測しています。この予測からも食糧生産や途上国の経済発展で益々水の需要が増えることが予想できます。2007年国連の第4次地球環境概要の報告によると、2025年には世界人口の2/3が水不足に苦しむと予測されています。現在、国連を中心に進めている「持続可能な社会」には、生命の維持に不可欠な水不足の解消が必要だと思います。今回は、身近に利用出来る量が減少しつつある「水」について纏めてみました。
淡水の概略の分布を下図に示します
河川や湖沼など私達が身近に利用可能な水は14万km3 (1,400,000憶トン)で、そのうち約10万km3 が降雨や降雪で再生される持続可能な水と言われております。
世界の水の取水量は2025年には1950年に比べ約3.8倍に増加すると予想されます。取水量の増加は人口の増加に比例しており、図でもわかるようにほぼパラレルに増加しております。水の使用量も2025年には1950年に比べ約3.8倍の増加が予想され、特に発展途上国の多いアジアで水の使用量が増加しております。これはアジアでのめざましい経済発展によるもので、限られた水資源の中で使用量が増加の一途をたどれば水不足に苦しむことになります。
(出展:国土交通省「国際的な水資源問題への対応」)
(出展:国土交通省「国際的な水資源問題への対応」)
(1)水ストレス 地球全体で見ると水資源は足りていますが、偏在して存在しているため、地域によっては枯渇化などが発生しております。水資源の枯渇化を表す尺度に「水ストレス」があります。世界各国や地域における水資源供給量に対する水需要量を示したもので、水ストレスが高い場合には需給が逼迫している状況を示しております。水ストレスの状態を表したマップによると、ストレスの高い地域は、東アジア、中東アジアから南アジア、米国西部などです。
(2)水に起因する問題 2008年の国連のデータでは、安全な水を利用できない人々が約8.8億人(アジア地域は4.7億人)おり、衛生設備のない地域に生活している人々が約25億人(アジア地域は18億人)と報告されております。このようにアジア地域では、生活用水の他に経済発展に伴う工業用水の需要の増加に加え人口増による食料増産のためのかんがい用水の増加があります。中国の第2の大河「黄河」について、どのようなイメージをお持ちですか。チベット高原や黄土高原の土砂を巻き込みながら渤海にそそぐ滔々と流れる大河をイメージされると思います。しかしながら黄河でさえも、流域に生活する人口の増加、工業用水による取水、食糧増産のためのかんがい用水の取水によって、河口に水が流れてこない「断流」現象が2000年まで頻繁に発生していたとのことです。河川流域は人口が集中し易く、水不足や汚染水流入など様々な問題が発生していると国連は報告しております。
日本では水で苦労するという実感は少ないと思います。しかし「水ストレス」を見ると日本は水ストレスの高い国と認識されております。水資源の分野には「仮想水(バーチャル・ウオーター)」という考えがあります。食料生産に必要な水、家畜の飼育や肥料を育てるのに必要な水及び工業生産に必要な水など大量の水資源を必要としています。仮想水とは、食料や工業製品を輸入している国が自国で生産するとしたらどの程度の水が必要かを想定したものです。国連は主要農作物について1キログラムあたりに必要な水の量を算定しております。主要農作物は以下の通りです。
主要農作物 | 水の量(トン) | 主要畜産物 | 水の量(トン) |
米 | 3.6 | 牛肉 | 20 |
小麦 | 2.0 | 豚肉 | 5.9 |
大豆 | 2.5 | 鶏肉 | 4.5 |
2005年のデータですが、日本の仮想水は800億トンで世界最大の水輸入国です。日本が1年間に使う水の量とほぼ同じ量を輸入している計算になります。
(出展:JICA)
今回は世界の水資源について纏めてみました。安定した水資源を確保するため有効な対策に「造水技術」があり、「海水淡水化技術」と「下水再利用化技術」が注目されています。「海水淡水化」は既に世界で6,000万トン/日稼働して海水から真水が作られていますが、海の近くに設置するという制約があります。「下水再利用化」は水道のある所なら下水は必ず発生し、「海水淡水化」に比べて1/3のコストで真水を製造できるとされています。中東などでは80%以上で下水が再利用されています。飲料用からかんがい用など用途に応じた淡水が製造可能です。今後、淡水化技術はますます能力を拡大し、技術も向上ていくものと考えます。