第35回「化学物質の管理」

    環境ショートレポート

    1.はじめに

    化学物質の規制に関しては、これまでEUの法律に関する「RoHS指令」「REACH規則」を取り上げております。今回は我が国の化学物質管理に関する「化学物質審査規制法(化審法)」「化学物質排出把握管理促進法(化管法)」について纏めてみました。化学物質は、自然界に存在するものや工業的に製造されるもの等、私達の身の周りに数多くあり様々な形で利用されております。しかしながら、人間や動植物に有害なものや地球環境に悪影響を及ぼす化学物質もあります。

    有害な化学物質を安全性の高いものに代替したり、人や環境が化学物質に曝される量を少なくするなどでリスクを下げることが必要です。化学物質を安全に利用するためには、化学物質が持つ毒性などの性質を把握し、リスクが十分低くなるように化学物質の製造や流通・使用を管理することが必要で、そのための日本の法律が「化審法」「化管法」です。

    2.化学物質に関する日本の規制

    下記の環境省のリンクは、様々な化学物質がどの法律で規制されているかをデータベース化したものです。この化学物質情報検索システム(ケミココ)は、法律の概要、確認したい情報、対象化学物質など様々な情報を確認できますので、化学物質に関する便利な情報検索ツールとしてご活用下さい。

    http://www.chemicoco.go.jp/laws.html

    3.化学物質審査規制法(化審法)

    人間や動植物に影響を及ぼす可能性のある化学物質のうち、農薬以外の化学物質を対象として規制する法律が「化審法」です。日本では新規化学物質を製造又は輸入しようとする者は、あらかじめ厚生労働大臣、経済産業大臣、環境大臣に届け出る必要があります。また、既存化学物質を含む全化学物質について、一定数量以上を製造、輸入した者は、毎年度その数量などを経済産業大臣に届け出る必要があります。

    ※<参考資料>化審法と他法令の関係

    https://www.env.go.jp/council/05hoken/y057-01/mat03.pdf

    (1)化審法の実施方法(スクリーニング評価)

    化審法では、既存化学物質を含む全化学物質について、まず「有害性」「暴露性」について、過去の情報からリスクが十分に低いと判断できるものを除外するスクリーニングが実施されます。

    • 「有害性」:化学物質が人や環境に有害か、という観点。
    • 「暴露性」:化学物質の製造・使用量が多いことや、難分解のため人間や動植物が化学物質にさらされる量が多くなるか、という観点。

    この観点から総合的にリスクが十分に低いものは「一般化学物質」として対象から除外されます。

    スクリーニングフローチャート

    *)「ケミココ」で該当物質を確認することができます。

    • 第一種特定化学物質:製造・輸入が禁止されます。
    • 第二種特定化学物質:リスク評価を受け毒性や環境残留性が高いと評価された物質。
      製造・輸入予定数量や実績の届け出が必要です。

    4.化学物質排出把握管理促進法(化管法)

    この法律は、事業者に化学物質の自主管理改善の促進と環境保全への未然防止の目的で制定されました。
    「化学物質の排出等の届出の義務付け(PRTR制度)」「化学物質安全データシート提供の義務付け(SDS制度)」などを規定しております。

    (1)化学物質の排出等の届出の義務付け(PRTR制度)

    有害性のある化学物質が、どのような発生源からどのくらい環境中に排出されたか、あるいは廃棄物に含まれて事業所の外に運び出されたかのデータを集計し、公表する制度です。

    PRTR制度の対象化学物質は下記に該当する物質です。

    • ・人の健康や生態系に悪影響を及ぼす恐れのある物質
    • ・自然状態で化学変化を起こし有害物質を生成する物質
    • ・オゾン層破壊物質

    環境中に広く継続的に存在する物質は「第一種指定化学物質」となり、環境中にそれほど多くない物質は
    「第二種指定化学物質」(PRTRの対象外)となります。
    こちらも「ケミココ」で該当物質かどうかを確認することができます。

    「第一種指定化学物質」を年間に1トン以上取り扱い常用雇用者数が21名以上の事業者は、環境中への排出量や廃棄物としての移動量を届出る義務があります。

    (2)化学物質安全データシート提供の義務付け(SDS制度)

    SDS制度は、化学物質の成分や性質(危険性や有害性)、取り扱いの注意点や漏出時の措置などに関する情報を記載した文書です。

    第二種を含めた指定化学物質やそれらを含む製品を事業者間で取引する際にはSDSを提供しなければなりません。SDS制度は全ての事業者が対象となります。
    化学物質の危険性については絵表示によるラベルの提供の努力義務が規定されております。

    化管法ラベル

    (出展:経済産業省)

    5.おわりに

     

    今回は化学物質が人や環境に悪影響を及ぼすリスクを抑制するための法規制を纏めてみました。化学物資に携わる方々にとって環境省の「ケミココ」は便利な検索ツールです。是非ご活用下さい。

    (参考資料)

    ・化学物質情報検索支援システム (環境省 2017.2)

    ・PRTRインフォメーション広場  (環境省 2017.2)

    ・化審法におけるスクリーニング評価・リスク評価 (経済産業省2017.2)

     

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